イベントレポート

東京・春・音楽祭2010「語りと音楽~春宵一刻値・・・?」

語りと音楽~春宵一刻値

3回目を迎える朗読ステージ「語りと音楽」今年のテーマは古典文学。

 昨年に続き、今年も「東京・春・音楽祭2010」に「ことばの杜」が参加いたしました。テーマは古典文学。古の日本語の美しいリズム・メロディー・響きを楽しんでいただきつつ、メンバーによる作者や時代背景の紹介も合わせ、四つの古典作品の世界をひも解いていく趣向です。
 司会に好本惠さん、音楽は新進チェリスト吉岡知広さんによる「バッハの無伴奏チェロ組曲」。スクリーンに絵画を投影する斬新な美術・総合演出に、東京芸術大学の田村吾郎さんを迎えた、公演当日の模様をレポートいたします!

何世紀を経ても古びないハイセンスなエッセイ『枕草子』『徒然草』

 背景に朝焼けを描いた絵画が映し出され、広瀬修子さんの穏やかな語りで、「枕草子」の冒頭「春はあけぼの~」から四季を描いた箇所が朗読されます。
 さらに「草の花」「虫」「うつくしきもの」などなど、心地よい言葉の響きで、清少納言の心に映った風物が次々と語られ、しばしウットリ。
 古文は耳で聞いたほうがずっと面白い!一作品目から古典朗読に魅せられてしまいました。

 風流な出で立ちで現れた次の語り手は宮本隆治さん。お題は吉田兼好の「徒然草」です。兼好は鎌倉~南北朝時代という激動の時代を生きた教養人。
 宮本さんの軽妙な語りで聞く、木登り名人の話、四十を過ぎた人の色恋についてなど多彩なエピソードの数々は、共感できるものばかり。時代を超越した兼好法師の人生観には、大いに興味をそそられました。

臨場感たっぷり!ルポルタージュの古典『方丈記』『平家物語』

 三作品目は、鴨長明の「方丈記」。語り手の山根基世さんは、世の無常を語る長明に、ジャーナリスティックなセンスを感じたのだそうです。確かに、長明が経験した平安末期に京を襲った大火事や大飢饉などのくだりでは、都の人々の惨状が恐ろしいほど克明に記録されていて、それを山根さんの整然とした語りで聞いていると、あまりにリアルで切なくなってしまうほどでした。

 そしていよいよ古典の金字塔「平家物語」の登場です。朗読は歴史といえばご存じ松平定知さん。「祇園精舎の~」堂々たる語りが始まると、もう源平のスペクタクルに身を委ねるばかりです!かつての琵琶法師もかくやという名調子に、若武者敦盛の最期では、目頭が熱くなり、那須与一が扇を射抜いた場面では、思わず歓声が!松平さんいわく「平家物語」は音読がおすすめ、同感です。

 一口に古典といっても、それぞれ個性の強い作品群、それに「ことばの杜」の四人のメンバーの個性が加わり、二時間余りのステージは、バラエティに富んだ中身の濃いものになりました。
 当日劇場でご覧になったみなさんはいかがでしたか?朗読で楽しむ古典の醍醐味を味わっていただけたでしょうか?今年は、国民読書年でもあり、これを機会にもっと日本の古典文学に親しんでみよう、と思っていただければなによりです。